事件報道記事


<埼玉・深谷市>猫虐待殺傷の一部始終を動画撮影した、鬼畜男の正体

大矢誠

週刊女性2017年10月17日号

http://www.jprime.jp/articles/-/10739 

目を背けたくなるような映像がネットに投稿されていた。 

 鳴きながら鉄製のオリの中を逃げ惑う、苦痛に怯えた表情の猫。熱湯を浴びせられ、ガスバーナーで焼かれ黒焦げにされる猫。瀕死の状態で歯を抜かれる猫……。 

 その様子を撮影している男こそが、動物愛護法違反の罪で8月27日に警視庁保安課に逮捕、東京地検に起訴された埼玉県さいたま市の税理士、大矢誠被告(52)だ。 

 少なくとも13匹の猫を虐待し、うち6匹の命を奪ったとされる。一部始終を動画撮影、インターネット上の匿名掲示板に投稿してその成果を報告していた。悪趣味を通り越した、猟奇的な行為だ。 

 虐待の凄惨さは回を追うごとにエスカレート、ネットの闇で動物虐待を喜ぶ連中は、大矢被告を「カルおじ」の愛称で持ち上げていた。

 大矢被告を知る人物が、表の顔を説明する。 

「20年以上、税務署に勤務すると税理士になれるそうで、5年くらい前に退官したそうです。昨年からは北本市内の税理士の事務所を引き継いでいます。役所に長く勤めていたせいか上から目線で話しますが、勤務態度はまじめで、仕事ぶりも細かく、トラブルもなかったそうです」 

 さいたま市の大矢被告が住む自宅の近所の女性は、 

マンションの組合の役員をしたり、お子さんとサッカーをしたり、家族思いの普通のおじさんという印象でした」 

 一見、仕事も家庭も順風満帆に見える人物が、次々と猫を捕まえ命を奪っていった。 

 猫の惨殺現場になったのは、同県深谷市にある一軒家。大矢被告の母親の実家だ。 

 古くからの住人は、 

「被告のおじにあたる人が住んでいましたが、10年くらい前に他界されて、それ以降は空き家になっていました」 

 と明かし、事件後に気づいたことを不安げな表情でつけ加えた。

うちの家族が言っていましたが、事件のあった家からは、時々煙が上がっているのを見たことがあるそうです。猫を焼いていた煙なのか……」 

 表面はまじめな税理士、ひと皮むけば残忍な動物虐待者。 

 事件の兆候のような出来事が大矢被告の個人事務所があるさいたま市見沼区周辺で起こっていた。近隣住民は話す。  

「夏ごろでしたか、野良猫が毒を飲まされて死んだんです。近所の人が飼う猫も行方不明になったり、近くの団地でも野良猫の数が、はっきりわかる感じで減っていました」 

 

 今から10年ほど前、大矢被告が川越税務署に勤務していたころに身勝手なトラブルを起こしたことがあるという。 

 当時を知る地元商工会の担当者が明かす。 

「納税者の留守に勝手に敷地内で税務調査をしていたそうです。それが発端でトラブルに発展。納税者から相談を受け、私たちが抗議活動をすると、その様子を勝手にケータイのカメラで撮影。結局、彼の上司が写真を消去しておさまりました。横柄というか高飛車な印象は、彼を知る人物の一致した見方でしたね」 

 大矢被告の横柄さは、逮捕後の供述に、如実だ。 

「猫は糞尿が臭く、爪で壁などを傷つけるので、有害動物の駆除をしただけ。法律違反ではない」 

 と、トンデモない強弁を繰り返したという。反省の様子は、まったくない。

 9月20日に保釈されたばかりの大矢被告を直撃した。

違います、違います、従業員です」と他人のふりをし、なぜ猫を虐待したのですか?と質問をぶつけても、無言。事件の説明をすることもなくそのまま歩き続け、助けを求めるために、なんと交番に駆け込んだのだ。 

 猫は動物愛護法で定められている『愛護動物』にあたる。殺したり、傷つけた場合の罰則は、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金になる。ペットはもちろん、野良猫も同様だ。 

 しかし猫の虐待、殺害事件で裁判になるケースはまれ。2016年、同様の事案が33件起訴されたが、29件が罰金刑を求めた略式起訴だった。 

大矢被告に懲役刑を求めるインターネット署名の活動をしている綿引静香さんは9月6日、約3万7000筆の署名を東京地検に提出した。 

「事件を知り、ショックと怒りを覚えました。虐待、殺害をして罰金で終わりなんて社会、おかしくないですか?」 

 と署名活動の理由を語り、その効果を次のように期待すると同時に、被告に償いを求める。 

「初公判に向けて10万人分の署名を提出したいと思っています。難しいかもしれませんが、実刑になれば、他の虐待への抑止力になります。 

 猫を虐待し、その動画で盛り上がるのは、異常です。心の闇が広がっているように思います。猫が嫌い、苦手だからといっても虐待していいわけではない。被告には一生かけて償ってほしい。可愛がれとは言いません、罪の深さを考えてほしい」 

 このような一般市民の動きを、「罰金刑ではなく、懲役刑を求めるムーブメントが高まっている」ととらえるのは、ペットや動物の問題を専門としている石井一旭弁護士だ。 

少しずつですが、厳罰化に向け動きだしています。小動物の虐待は再犯率も高く、何らかの犯罪の温床、きっかけになることもありますからね」 

 そう話すと同時に、人間の事件と違って人材を投入できない捜査当局にかわる新たな組織づくりを提案する。 

「“アニマルポリス”のような専門機関を設置することが必要です。加害者たちは罰則を知っているから、隠れて虐待する。それを捜査で明るみにしなければ、新たな事件が起きる。罰せられることをアピールする必要はあります」 

 逮捕拘留中の被告は、面会した税理士事務所関係者が「事務所を出て行ってもらえますか」と言っても、「俺を追い出したいのか!」と食ってかかったというが、 

「保釈されて世間の反応をいろいろ見たり聞いたりしたんでしょうね。本人から、“撤退する”と申し出があったそうです。今は、少し弱気になっていると聞きました」 

 と前出の大矢被告を知る人物は、直近の様子を明かす。 

 9月29日現在、市民の怒りや悲しみの声が反映された署名は9万3000筆を超えた。 

 現在、大矢被告は、妻と2人の子どもと暮らし、初公判を待つ。どうあがこうが犯した罪は消えることはない。 

 被告は自分のしたことを自覚しているのだろうか。