氾濫する動物虐待動画ーメディア記事


動物虐待を「芸術作品」と喜ぶ人々の闇、罰則強化と根本治療を考える

動物虐待動画 生き物苦手板

週刊女性2018年5月29日号 

http://www.jprime.jp/articles/-/12349

 パソコン画面に小さな鉄製の檻の中で怯えた表情の猫の動画が映し出される。熱湯をかけられたり、ガスバーナーで炙られたり、感電死させられた猫もいた。 

 インターネット上には、虐待目的で動物を捕獲し、残虐な方法で痛めつける動画の投稿が相次ぐ。中でも匿名掲示板5ちゃんねる内の「生き物苦手板」はひどい。特に猫の被害が目立つ。 

《猫に熱湯をかける緩急の付け方が素晴らしい》《芸術作品だ》《こんな作品(虐待動画)を作りたい》などと虐待動画を称賛し、投稿者を《アーティスト》と持ち上げている。 

 猫を13匹虐待したとして昨年逮捕され、執行猶予中の元税理士も同種の掲示板の常連だった。こうした掲示板からはほかにも逮捕者が出ており、動物愛護団体などから“犯罪の温床”と指摘されてきた。 

 警察庁は昨年、犬・猫・ウサギなどを殺傷したり、虐待・遺棄したなどとする動物愛護管理法違反で68件を摘発、76人を逮捕・書類送検したと発表した。 

 同掲示板をパトロールし、虐待を警察に通報している福岡県の坂本和樹さん(仮名・35)は訴える。 

「ネット上に投稿される虐待動画や文章は残虐性がエスカレートしており、歯止めがきいていない。猫の殺害の報告や犯行予告も書かれていますが、匿名なので投稿者の特定は困難。さらに逮捕されないように《これは夢の話なんだけど》《妄想》などと前置きをしているため真偽を確かめるのも難しい状況です」 

 特に掲示板が活発になるのは春先が多いという。 

「春は猫の出産シーズン。里親を装って虐待目的で子猫を譲り受ける“里親詐欺”を働くケースもあります」 

 と明かすのは里親詐欺への注意を呼びかけている埼玉県の近藤瞳さん(仮名・35)。 

 後を絶たない残酷な書き込みや動画の投稿を罪に問うことはできないのか。 

 犬や猫などをみだりに殺したり傷つけた場合、動物愛護管理法では2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられる。 

 動物関連の法律に詳しい渋谷総合法律事務所の渋谷寛弁護士は、 

「ネットに虐待の状況を書き込めば『犯罪の告白』とみなして警察が捜査できます。第三者が虐待を煽ったり、称賛して犯罪をそそのかすことは『教唆』にあたります。虐待しても簡単には捕まらないなどと虐待犯に伝えて犯行を手助けすれば『幇助』です。“猫を殺す”と言えば『脅迫罪』にあたる場合もあります。しかし、動物愛護管理法違反にかかる教唆・幇助犯の摘発は前例がなく難しい」 

 動画についても「動物虐待に限らず、殺人など残虐な動画を撮影、投稿することじたいを規制する法律はありません。動画を取り締まるための新たな法律をつくる必要があります」(前出・渋谷弁護士) 

 ペットセラピーなど動物に関する研究を続ける「あいわクリニック」の精神科医、横山章光院長は動物虐待犯の研究がほとんど行われていないことを問題視する。 

「罰則を強化するだけでは隠れてやる人が増えるだけ。虐待をするその根っこにある原因を見つけて治療しなければならない。虐待動画の投稿者は、動物が苦しんだり痛がったりすることに共感できていない精神状態にあると考えられる」(前出・横山院長) 

 今年は、5年に1度の動物愛護管理法改正が行われる年でもある。 

 残虐動画の取り締まりや、虐待をほのめかす書き込みの規制に対して、メスは入るのだろうか。